拙著『実世界自然言語処理』の事前予約が可能になりました

Posted on 2019-07-09(火) in Research

昨年の夏ほどから執筆を開始した拙著『実世界自然言語処理 (Real-World Natural Language Processing)』の事前予約が可能になった。

この事前予約、正確には MEAP (Manning Early Access Program) と言い、購入すると、執筆中の書籍の執筆が完了した章から順番に読めるようになり、最後に完成した書籍が手に入る、というもの。執筆中のため、誤りがあったり校正がまだ整っていなかったりする可能性もあるものの、完成した書籍を後から買うよりも安価に購入できるというメリットがある。興味のある方は、以下のリンクを参照して欲しい。

『実世界自然言語処理 (Real-World Natural Language Processing)』

本書籍は、昨年の夏ごろ、Manning の編集者から連絡があり、執筆を開始していたものだ。全編英語で、しかも単著で書籍をイチから執筆するということで、色々と大変なこともあったが、とりあえず一つのマイルストーンまで辿り着けたことでほっと胸をなでおろしている。執筆を開始したいきさつについては、以下の記事に詳しく書いたので、興味のある方はこちらもどうぞ。

海外で技術書をゼロから執筆・出版する方法

本書の特徴

本書は、他の自然言語処理や機械学習の教科書や入門書とは一味違ったものになっていると自負している。一般の教科書では、「ニューロンとは」「活性化関数とは」みたいな入門的な概念から始まり …


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中国トップ研究者による自然言語処理の入門者へのアドバイス

Posted on 2019-04-25(木) in Research

スタンフォード大学の博士課程を卒業、対話モデル・強化学習の応用等の分野で多大な成果を残し、現在では中国の自然言語処理スタートアップ Shannon.ai をリードする Jiwei Li (李纪为)氏による、「自然言語処理に入門する際のちょっとしたアドバイス (初入NLP领域的一些小建议)」と題された記事がありましたので、内容を簡単に紹介します。

私もこの分野でかれこれ10年以上、研究開発に携わっていますが、彼のアドバイスには同意するところが多いです。どちらかと言えば、修士・博士課程の学生のような、「自然言語処理の研究に入門する人」を対象に書かれた文章ですが、それ以外、例えば、業務で自然言語処理を使うような方にも有用なアドバイスが多くあります。

彼のような優秀な研究者でも、「PRML を途中で投げ出した」ような体験談が語られているところ、私達にも親近感が持てますね。個人的には、近年の中国と中国系研究者の躍進によって、中国語でこのような良質な第一次情報がどんどん出始めたという点も感慨深いです。


自然言語処理は、今や人工知能の中でも非常に重要な分野の一つになった。

誰もが TensorFlow や PyTorch で簡単にモデルを書けるようになった今、多くの研究者がデータセット上でのベンチマークを更新することに躍起になっている。モデルを実装するのが簡単になった分、最高精度を更新するのも簡単ではなく、新規性が無く論文が通らないか、通ってもインパクトを残せない。

深層学習の普及によって、アルゴリズムそのものに注目が集まりすぎ、モデルのアーキテクチャの改善が多数提案され …


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博士のための「けものみち」就職活動ガイド

Posted on 2017-01-01(日) in Research

注:本記事は、私個人のブログの記事「博士のための「けものみち」就職活動ガイド」(2009年3月30日投稿)を編集してこちらに再掲載したものだ。元記事を書いてからほぼ8年が経ち、私も2回の転職を経験したが、基本的な考えは今でも変わっていないので、少し追記した上で掲載したいと思う。

やっと就活も一段落して、博士も無事取れたので、自分の就活体験について、「就活を始める前の自分に伝えたい、博士の就活のコツ」という形で書いてみる。同じ境遇にある人の参考になれば幸いです。

情報収集フェーズ と 応募フェーズは分ける

まず大前提として、博士を出て就職しようという場合、大企業で博士新卒の枠に収まるのでなければ、「けものみち」就活は覚悟しなければいけないということ。それだけ、基本的なスキルに加え、枠にとらわれない柔軟性、積極性、対人能力が求められる。修士までの「レールの敷かれた」就活とはかなり事情が異なるので、ここでは梅田望夫さんの言葉を借りて「けものみち」就活と呼んでみたい。

就活を始める前の自分に一つだけ最も大切なことを伝えられるとしたら、「まず情報収集を、早めに、徹底的にやっておく」ことをアドバイスすると思う。情報収集といっても、企業のウェブを見たり、『就職四季報』を見たりといった表面的なことではなく(もちろんそれも大事だが)、実際に社員の人に会って話を聞いたり、オフィスの見学をしたり …


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