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CLL 第18章 ロジバウ・メクソ~ロジバンの数式

1. はじめに

ロジバウ・メクソ(lojbau mekso, ロジバンの数式)は、ロジバンの中で、数学的性質についての文を表現したり、数学と関係ない文に数値情報を追加したりするために仕立てられている部分だ。その形式上の設計目標には、以下のことが含まれている。

  1. 数学者の標準的な書き方に従う数式の形式は、どんな形式でも表せるようにする。そうすれば、最小限の努力で書かれた数学の文を、読み手が曖昧性無く読み上げ、それを聞き手が理解することを期待できる。
  2. 共通に使われる数学用語の語彙を提供する。この語彙は、ロジバンの資源を使って、新しい造語を取り込んで拡張できるようにしておく。
  3. 書くにしても話すにしても、数学の文を曖昧性無く定式化できるようにする。
  4. 自然言語にある量化表現の形を全て含むようにする。さらに、標準的な言語条件の下で、自然言語よりもっと精密となることを可能にする。

目標1のためには、ポーランド記法や逆ポーランド記法といった単一の記法に縛られず、最もよく使われる形が最も簡単に使えるようにした上で、全ての形を提供する必要がある。

目標2のためには、いくつかの変換の仕組を提供する必要がある。そうすれば、メクソとロジバン全体との境界線が、両面から多くの点で交わることが可能になる。

目標3は最も緻密なところだ。書かれた数式は文化的に曖昧なところが無い。つまり、世界中どこの数学者でも、同じ数式を見たら同じ意味として理解している。しかし、国際的な数学記法は、単一の形を規定してはいない。例えば以下の式

1.1)   3x + 2y
では、掛け算の記号が省略されているが、「3x」や「2y」という記号列に対して、数学的掛け算以外の解釈をすることも可能だ。したがって、例1.1をロジバンの言葉で表した形では、話すにしても書くにしても、掛け算の演算子を省略してはいけない。

以下、この章では、現時点で可能な限り詳細に、メクソの体系を説明する。メクソの構成要素に関しては、完全に網羅するようにしているが、その使い方については示唆を与えるだけに止めている。現在のところ、メクソの能力を生かして広く使われた例は無い。多くのことが完全に明らかになるには、試用期間が必要だ。

2. ロジバンの数

この節では以下のシマヴォが議論される。

     pa      PA                  1
     re      PA                  2
     ci      PA                  3
     vo      PA                  4
     mu      PA                  5
     xa      PA                  6
     ze      PA                  7
     bi      PA                  8
     so      PA                  9
     no      PA                  0

メクソで最も単純なのは数であり、これはシマヴォか複合シマヴォになっている。10進数の各数字を表すシマヴォがあり、9より大きい数は、それらのシマヴォの列として表される。

2.1)   pa re ci
       123
       百二十三

2.2)   pa no
       10
       十

2.3)   pa re ci vo mu xa ze bi so no
       1234567890
       十二億三千四百五十六万七千八百九十
10進数の十や百を表す単一のシマヴォは無い。

no (0) 以外の数字シマヴォは、あるパターンに従っている。1から5のシマヴォは、順番に -a, -e, -i, -o, -u で終わる形になっている。6から9のシマヴォも同様に -a, -e, -i, -o で終わる。同じ子音で始まる数字シマヴォは無い。騒音の多い環境でも聞き取りやすくするためだ。

3. 符号と数の区切り

この節では以下のシマヴォが議論される。

     ma'u    PA  +(正号)
     ni'u    PA  -(負号)
     pi      PA  小数点
     fi'u    PA  /(分数)
     ra'e    PA  循環小数
     ce'i    PA  %(パーセント)
     ki'o    PA  キロ(3桁の区切り)

数の前に「ma'u」と「ni'u」を付ければ、正負を明示することができる。これらは正負の記号であって、足し算や引き算や否定演算子ではない。

3.1)   ni'u pa
       -1
文法上、これらの符号は数の一部分とみなされる。「ma'u」と「ni'u」は単独でも数として扱うことができる。その場合の意味は、第8節で説明する。

数のいろいろな区切りはシマヴォで表される。

3.2)   ci pi pa vo pa mu
       3.1415
例3.2のような小数点を「.」ではなく「,」で表す文化もあるが、ロジバンの「pi」は常に小数点を表す。
3.3)   re fi'u ze
       2/7
例3.3 は「7分の2」という数の名前であり、「2割る7の計算結果」と同じ値であるが、ロジバンでの意味は異なる。分数の分母があって分子がない場合、分子を1と見なす。これによって、逆数は以下のように表される。
3.4)   fi'u ze
       1/7

3.5)   pi ci mu ra'e pa vo re bi mu ze
       .35142857142857...
「ra'e」は小数の循環部分「142857」の直前に付く。
3.6)   ci mu ce'i
       35%
# 他の符号が直後の数字列に意味を付与するのに対して、 ce'i だけが直前の数字列に意味を付与することになっているのは、首尾一貫性に欠ける。
3.7)   pa ki'o re ci vo ki'o mu xa ze
       1 234 567
例3.7のような3桁の区切りを「,」で表す文化もあるが、ロジバンでは常に「ki'o」が使われる(# 国際度量衡委員会に従うなら、桁区切りにスペース以外の記号を入れてはいけない)

「ki'o」列の間の数字は3個より少なくてもよい。その場合は「0」が省略されているとみなされる。

3.8)   pa ki'o re ci ki'o vo
       1 023 004
「ki'o」は「pi」の後でも3桁の区切りとして使える。
3.9)   pi ki'o re re
       .022

3.10)  pi pa ki'o pa re ki'o pa
       .1012001
# 例 3.8, 3.9, 3.10 のように、 ki'o の直後の 0 を省略する場合、その数全体を言い終わるか、次の ki'o が現れるまでは、何個の 0 が省略されているか判別できない。例えば
3.8-1) pa ki'o re li'o
3.9-1) pi ki'o pa li'o
のように、ki'oの後の数字の続きが li'o で省略された場合、 ki'o の後の 0 が何個省略されたのかわからない。特に、例 3.9-1 のような小数の表現では、続きを省略するのは珍しいことではないから、 ki'o の使い方には注意が必要だ。

4. 特殊な数

この節では以下のシマヴォが議論される。

     ci'i    PA  無限大
     ka'o    PA  虚数 i, sqrt(-1)
     pai     PA  π, パイ (約 3.14159...)
     te'o    PA  ネイピア数 e (自然対数の底、約 2.71828...)
     fi'u    PA  黄金比 Φ, ファイ (1 + sqrt(5))/2 (約 1.61803...)
fi'u は分数の記号と同じだ。分母も分子も無い、単独の分数の記号は、黄金比を表す。

数は第2, 3, 4節のシマヴォを組み合わせて表される。

4.1)   ma'u ci'i
       +

4.2)   ci ka'o re
       3i2 (複素数 3 + 2i )
「ka'o」が虚数 i を表すと同時に、複素数の実部と虚部を分離する区切り記号でもあることに注意しよう。
4.3)   ci'i no
       アレフ・ゼロ
       0 (超限数)

「pai」と「te'o」は数学的に重要なので、専用のシマヴォがある。

4.4)   pai
       パイ π

4.5)   te'o
       ネイピア数 e
シマヴォの組み合わせには、意味が定義されていないものもたくさんある。
4.6)   pa pi re pi ci
       1.2.3

4.7)   pa ni'u re
       1 負号 2
例4.7 は「1引く2」ではなく、意味が与えられていない単一の数である。このように、意味がうまく定義されていない数はたくさんある。こういう数は、実験的な用途やロジバンの数体系の将来の発展のために使える。

こういう「変わりもの」の中には、数学の中の狭い分野で有効に使えるものもありうる。こういう数構造を特殊な用途に使おうとする数学者は、他の分野で別の用途で使われる可能性がないかどうか、よく考える必要がある。

数に関する情報は第8節 から 第12節にもある。

5. 簡単な中置型 (infix) の式と等式

この節では以下のシマヴォが議論される。

     du      GOhA    イコール
     su'i    VUhU    足す
     vu'u    VUhU    引く
     pi'i    VUhU    かける
     te'a    VUhU    累乗
     ny.     BY      文字 n
     vei     VEI     左括弧
     ve'o    VEhO    右括弧

「1足す1は2」をロジバンで言うと以下のようになる。

5.1)   li pa su'i pa du li re
       1 + 1 = 2
メクソ文例5.1はメクソの特徴を活かした標準的なブリディだ。「du」は「x1 と x2 は数学的に等しい」という意味の述語だ。これは簡潔性のためにシマヴォとなっているが、文法的な性質は他のブリヴラと同じだ。数学的な文脈以外では、「du」は「x1 と x2 は同一、同じもの」という意味になる。

シマヴォ「li」は数の冠詞だ。数量詞を何かの量ではなく数として扱うときにはいつでも li を付ける必要がある。例えば

5.2)   le ci prenu
       3人の人
では冠詞「li」を付けない。なぜなら、「ci」が「prenu」の人数を特定するために使われているからだ。一方
5.3)   levi sfani cu grake li ci
       この蝿は3グラムだ。
では「li」が必要だ。なぜなら、このブリディの中では「ci」がスムティとして使われているからだ。ロジバンでは測定量がこのように表される。長さ、質量、温度などの単位を表す述語は全て、測定対象を x1 とし、数値を x2 とする。例5.2の「le」を「li」で置き換えると
5.4)   li ci prenu
       数3は人だ。
となり、文法的には正しいが、意味的にはおかしい。数は人ではないから。

シマヴォ「su'i」はセルマホ VUhU に属している。 VUhU は演算子 (operator) からなり、 su'i は「足し算」を表す。以前にも述べたが、正の数を表すときに使われる「ma'u」とは区別される。

5.5)   li ma'u pa su'i ni'u pa du li no
       +1 + -1 = 0

「du」の両辺に複合メクソを入れることも、もちろん許されている。

5.6)   li mu su'i pa du li ci su'i ci
       5 + 1 = 3 + 3
「li mu su'i li pa」ではなく「li mu su'i pa」を使うのはなぜか?それは、 VUhU 演算子が繋ぐものは、スムティではなくてメクソ被演算子(mekso operand, 例5.6では数)であるからだ。「li」はメクソ全体をスムティにするために使われる。そうすると、他のスムティと同じ役割を持つことになる。例5.6について言えば、ブリディの場所に入るという役割だ。

デフォルトでは、ロジバンの数学に「演算子の優先順位 (operator precedence)」は無い。例えば足し算 su'i と掛け算 pi'i を含む計算をする場合、

5.7)   li ci su'i vo pi'i mu du li reci
       3 + 4 × 5 = 23
例5.7はロジバンでは偽である。普通の数学の慣習では、掛け算を足し算より先にすることになっているから、「3 + 4 × 5」はまさに 23 である。つまり、「4 × 5」を先に計算して 20 が得られ、その後に足し算「3 + 20」を計算する。しかし、 VUhU 類の演算子は、デフォルトでは左から順番に計算する。したがって、真となるブリディは以下のようなものだ。
5.8)   li ci su'i vo pi'i mu du li cimu
       3 + 4 × 5 = 35
ここでは「3 + 4」を先に計算して 7 となり、次に「7 × 5」を計算して、答えは 35 となる。この結果は、単純であるという利点があるが、数学の標準的な慣習に一致させるという目的に反する。どうしたら良いだろうか?

これには3つの解決方法がある。どの方法もある程度使われるだろう。第1の方法は、問題を無視することだ。掛け算を足し算より優先させるという考えは深く根付いているので、人は意味論を全く無視したロジバンの構文解析に屈せずに、「li ci su'i vo pi'i mu」は 23 だと言うだろう。この方法では根本的に、この一分野に於いて、意味論が統語論を凌駕することを許している。

(なぜ演算子の優先順序を文法に組み込んでおかないのか?それは、演算子が多すぎるからだ。あまり知られていない演算子もあるし、使い方によって優先度が違うものもある。C言語には13種類の優先度があり、演算子のリストは拡張することもできない。ロジバンにとって、このやり方は実用的ではない。それに、優先順序を文法に組み込んでしまうと、表計算のような、慣習の違う数学システムの中で、優先順序を書き換えることができなくなる。)

第2の解決方法は、演算子の優先順序を明示することだ。この方法は完全に一般的に適用できるが、綺麗ではない。この方法については第20節で説明する。

第3の解決方法は単純だが、一般的ではない。演算子の直前にセルマホ BIhE のシマヴォ「bi'e」が付くと、この演算子の優先順位は、「bi'e」無しの演算子よりも高くなる。従って

5.9)   li ci su'i vo bi'e pi'i mu du li reci
       3 + 4 × 5 = 23
というロジバンのブリディは真である。直前に「bi'e」が付いた演算子が2個以上ある場合は、後ろの方から順番にグループ化される。1個の演算子に複数の「bi'e」を付けることは禁止されている。

もちろん、これに加えてロジバンには数学の括弧「vei」と「ve'o」があり、「( )」という記号と同じで、数式を自由にグループ化するのに使える。

5.10)  li vei ny. su'i pa ve'o pi'i vei ny. su'i pa [ve'o] du
            li ny. [bi'e] te'a re su'i re bi'e pi'i ny. su'i pa
       (n + 1)(n + 1) = n2 + 2n + 1
例5.10ではいくつか新しい表現を使った。「te'a」は「累乗」、字詞「ny」は文字「n」を表す。メクソの中の字詞は、普通の数学の中で使われる文字と同様、変数を表す。パーサ(構文解析器)は、複数の字詞の列を、単一の字詞と同じものとして扱う。「abc」は単一の字詞と同じであり、「a × b × c」という意味はない。(もちろん、ある場合に変数「abc」が「a × b × c」の結果と等しいと言うことは可能だ。)

掛け算を記号で書くときは、掛け算の記号を省略することが多いが、ロジバンで口述するときは掛け算の演算子「pi'i」を明示しなければならない。閉じ括弧「ve'o」は省略可能な終端詞だ。例5.10で1つ目の ve'o は必要だが、2つ目の ve'o は省略できる。また、1つ目の bi'e は省略してもグループ化に影響ないが、2つ目の bi'e との対称性を示すために入れてある。

6. 前置型演算子(ポーランド記法の関数)

この節では以下のシマヴォが議論される。

     boi     BOI     数詞列・字詞列の終端詞
     va'a    VUhU    否定・加法逆元
     pe'o    PEhO    前置型演算子開始
     ku'e    KUhE    前置型演算子終了
     py.     BY      字詞 p
     xy.     BY      字詞 x
     zy.     BY      字詞 z
     ma'o    MAhO    被演算子を演算子に変換
     fy.     BY      字詞 f

これまで説明してきた中置型は、多くの目的で合理的だが、限定的で、融通がきかない。中置型は、すべての演算子がちょうど2個の被演算子を持ち、括弧の助けも借りて優先順位が文脈からわかるか、優先度が2段階しかない場合だけしか使えない。

しかし、被演算子が2個ではない演算子や、被演算子の個数が変化する演算子も多い。そういう場合の望ましい数式の形は「前置型演算子」を使ったものだ。これはポーランド記法とも呼ばれる。この方法で数学を書くと、演算子が最初に来て、その後に被演算子が来る。

6.1)   li su'i paboi reboi ci[boi] du li xa
       sum(1,2,3) = 6
普通は省略可能な終端詞「boi」がこの「pa」と「re」の後では必要になることに注意しよう。もし「boi」が無いと pareci = 123 になってしまうからだ。ここでは「ci」の後の「boi」は省略できるが、対称性のために括弧付きで入れておいた。「boi」が必要になるのは、例6.1のように、2つの数や文字が連続して現れるときだけだ。

前置型のメクソは、被演算子を何個でも扱うことができる。例6.1では3個だ。曖昧な状況では、被演算子がいくつあるか、どのようにして分かるだろうか?そのためにはロジバンでよくある解決方法を使う。省略可能な終端詞「ku'e」を使うのだ。例えば

6.2)   li py. su'i va'a ny. ku'e su'i zy du li xy.
       p + -n + z = x
この「va'a」は前置型演算子であることが分かる。なぜなら、その前に被演算子が無いからだ。

「va'a」はセルマホ VUhU の数値否定演算子だ。これに対して「vu'u」の方は数値否定には使われず、常に2個以上の被演算子を持ち、引き算だけに使われる。「va'a」と「vu'u」は演算子であり、数の一部である「ni'u」と混同してはいけない。

例6.2では、演算子「va'a」と終端詞「ku'e」が括弧の役割を果たす。(普通の括弧「vei」と「ve'o」は、この目的で使われることはない。)もし「ku'e」が無いと、「su'i zy」が前置型演算子「va'a」の中に取り込まれ、「su'i zy」を前置型の数式と見なして、 va'a が2個の被演算子「ny」と「su'i zy.」を持つ形になってしまう。

前置型メクソは標準的な関数の表記法と一致させるためにも役に立つ。「z = f(x)」は以下のように表される。

6.3)   li zy du li ma'o fy.boi xy.
       z = f(x)
ここでも括弧は使われない。「ma'o fy.boi」という構造は1つの演算子に等しく、ここでは前置型として使われている(ただし、中置型の演算子として使うことも可能だ)。数学では、文字が関数を意味することも変数を意味することもあり、どちらなのかは文脈によってしかわからない。ロジバンではデフォルトで変数と見なし、レルフ列にフラグ「ma'o」をつけたものは関数と見なす。例6.3のシマヴォ「xy.」と「zy.」は変数だが、「fy.」には「ma'o」が付いているので演算子(関数)である。ここでは「boi」を省略できない。もし「boi」が無いと、「xy.」が演算子の名前の一部分のように見えてしまうからだ。(フラグ「ma'o」はレルフ列だけでなく、どんなメクソ被演算子にも付けられる。詳しくは第21節を参照。)

前置型メクソを使うときは、演算子の前にフラグ「pe'o」を置いても良い。これを使うと、「pe'o」と「ku'e」の組によって、被演算子のリストの範囲がはっきりと定められるので、混乱を避ける助けになる。例6.1から6.3は、「pe'o」と「ku'e」を明示すると、それぞれ以下のようになる。

6.4)   li pe'o su'i paboi reboi ciboi ku'e du li xa

6.5)   li py. su'i pe'o va'a ny. ku'e su'i zy du li xy.

6.6)   li zy du li pe'o ma'o fy.boi xy. ku'e

注:前置型メクソを使うときには、被演算子が本当に被演算子であるかどうか、確認しておこう。中置型の数式は、「vei」と「ve'o」で囲まない限り、被演算子の中に入れてはいけない。複雑な例17.6の昔の版では、私はこの規則を忘れてしまっていて、失敗だった。

7. メクソ・ブリディに役立つ他のセルブリ

これまでの例は、個別のメクソ(ロジバンでは、メクソだけでも正しいロジバン文として成り立つ)と「du」を使った等式ブリディだった。「x < 5」といった不等式はどうなるか?そのためには以下のように適切なセルブリを使ってブリディを作る。

7.1)   li xy. mleca li mu
       x < 5

数学ブリディに役立つセルブリのリストの一部を以下に挙げる。

     du          x1 は x2, x3, x4, ... に等しい
     dunli       x1 は x2 と性質・次元・量 x3 に関して合同
     mleca       x1 は x2 より小さい
     zmadu       x1 は x2 より大きい
     dubjavme'a  x1 は x2 より小さいか等しい        [du ja mleca]
     dubjavmau   x1 は x2 より大きいか等しい        [du ja zmadu]
     tamdu'i     x1 は x2 と相似                 [tarmi dunli]
     turdu'i     x1 は x2 と同形                 [stura dunli]
     cmima       x1 は集合 x2 の元
     gripau      x1 は集合 x2 の部分集合          [girzu pagbu]
     na'ujbi     x1 は x2 に近似                 [namcu jibni]
     terci'e     x1 は関数 x2 の体系 x3 における要素
# terci'e は te ciste のルジヴォ。 x4 として系の性質をとる。
「dunli」と「du」の違いに注意しよう。「dunli」の PS には、何が同じなのかを特定する場所 x3 がある。一方「du」は実際に等しいことを表し、場所の個数はいくつあっても良い。
7.2)   py. du xy.boi zy.
       p = x = z
ロジバンでは、1つのブリディに述語が1つずつしか入らないので、「du」は繰り返さない。

これらのセルブリの前に矛盾否定のシマヴォ「na」を付けることができる。「na」は、そのセルブリが表す関係が偽であることを表す。

7.3)   li re su'i re na du li mu
       2 + 2 ≠ 5
ロジバンのブリディの否定は、単に偽であることを表し、何が真であるかについては何も言っていない。

8. 不定の数

この節では以下のシマヴォが議論される。

     ro      PA      全て
     so'a    PA      ほとんど全て
     so'e    PA      大半
     so'i    PA      多く
     so'o    PA      いくつか
     so'u    PA      少し
     no'o    PA      典型的な数
     da'a    PA      ある数 [デフォルトで1] を除く全て

     piro    PA+PA   全部
     piso'a  PA+PA   ほとんど全部
     piso'e  PA+PA   大半の部分
     piso'i  PA+PA   多くの部分
     piso'o  PA+PA   いくらかの部分
     piso'u  PA+PA   少しの部分
     pino'o  PA+PA   典型的な量

     rau     PA      充分
     du'e    PA      過多
     mo'a    PA      過少

     pirau   PA+PA   充分
     pidu'e  PA+PA   過多
     pimo'a  PA+PA   過少

セルマホ PA には、通常の数学的意味での数ではないものを表すシマヴォもある。例えばシマヴォ「ro」は「全」や「各」という意味だ。この数は理論上決まった値を持たない。「li ro」は定義されていない。しかし、ものを数えたり定量化したりするとき、「ro」と「pa」の対応は明らかになる。

8.1)   mi catlu pa prenu
       私は1人の人を見る。

8.2)   mi catlu ro prenu
       私は全ての人を見る。
例8.1は真になり得るが、例8.2はほとんど確実に偽だ。

シマヴォ「so'a」「so'e」「so'i」「so'o」「so'u」は「ro」より少ない不定の数を表す。これらはアルファベット順に量が少なくなるようにできている。

8.3)   mi catlu so'a prenu
       私はほとんど全ての人を見る。

8.4)   mi catlu so'e prenu
       私は大半の人を見る。

8.5)   mi catlu so'i prenu
       私は多くの人を見る。

8.6)   mi catlu so'o prenu
       私は幾人かの人を見る。

8.7)   mi catlu so'u prenu
       私は少しの人を見る。
日本語訳は大雑把なものだ。これらのシマヴォは、「ro」と「no」の間に5個の不定の数が順番に並ぶ空間を提供する。特に、「so'e」は「大多数」と言う意味の「大半」ではなく、半分よりは多いということを表す。

これらの数と「ro」の前に「pi」(小数点)を付けて、1より小さい数にすると、合計のうちの幾つかではなくて、全体のうちの一部分を表すことができる。「piro」は「全部」を表す。

8.8)   mi citka piro lei nanba
       私はパンを全部食べた。
「piso'a」は「ほとんど全部」、以下同様にして、「piso'u」は「少しの部分」となる。例8.8が示すように、これらの数は特に、数えるものではなく測る量を表すのに適切だ。

このほか、シマヴォ「no'o」があり、「典型的な値」を表す。「pino'o」は「典型的な量」だ。「no'o」は「平均的な値」と訳せる場合もあるが、この「平均的」は、一般には数学的な平均値とか中央値とか最頻値といったものを指さない。これらの数学的な値は、演算子によってもっと適切に表現される。

8.9)   mi catlu no'o prenu
       私は典型的な人数の人を見る。

8.10)  mi citka pino'o lei nanba
       私は典型的な量のパンを食べる。

これらに関連するシマヴォ「da'a」は「~を除く全て」を意味する。

8.11)  mi catlu da'a re prenu
       私は2人を除く全ての人を見る。

8.12)  mi catlu da'a so'u prenu
       私は少しの人数を除く全ての人を見る。
例8.12例8.3の意味は似ている。

「da'a」の後に数が来ない場合は、デフォルトで「pa」があることにする。「da'a」だけだと「1を除く全て」という意味になる。普通の文脈では、「今言ったもの以外」という意味になる。

8.13)  ro ratcu ka'e citka da'a ratcu
       全ての鼠は他の全ての鼠を食べることができる。
「da'a」を使うことによって、例8.13は、「全ての鼠が自分を食べることができる」という意味に必ずなるわけではないが、そういう場合があることも許容している。各鼠には、食べることのできない鼠が1匹いるが、それが自分自身であるとは限らない。文脈上は、「他の鼠」が「自分以外の鼠」という意味ではないこともよくある。

第3節で言ったように、文法上、「ma'u」と「ni'u」も数であり、それぞれ「ある正の数」と「ある負の数」である。

8.14)  li ci vu'u re du li ma'u
       3 − 2 = ある正の数

8.15)  li ci vu'u vo du li ni'u
       3 − 4 = ある負の数

8.16)  mi ponse ma'u rupnu
       私は黒字だ。
これまで議論してきた数は、不定のものも含め、すべて客観的なものだ。もし、この世に超大国(「rairgugde」、traji gugde 極致-国)がちょうど6ヶ国だけあるとすれば、「ro rairgugde」と「xa rairgugde」は同じ意味になる。しかし、主観的な不定の数を表現する方が便利であることもしばしばある。その場合、シマヴォ「rau」(充分)、「du'e」(過剰)、「mo'a」(過少)を使うのが適切だ。
8.17)  mi ponse rau rupnu
       私には充分お金がある。
「so'a」シリーズと同様に、「rau」、「du'e」、「mo'a」も「pi」の後に付くことができる。例えば「pirau」は「充分な部分」という意味だ。

特定の数と不定の数を結合して、単一の数を表すこともできる。この使い方では、以下のような文脈で、特定・不定という2種類の数が同じ値を持つという意味になる。

8.18)  mi viska le rore gerku
       私は犬を2匹とも見る。

8.19)  mi speni so'ici prenu
       私は3人もの人と結婚する。
例8.19で、「3人"も"」と言っているのは、一夫一妻が一般的であるような文化を想定した主観を表している。

9. 近似と不正確な数

この節では以下のシマヴォが議論される。

     ji'i    PA  およそ
     su'e    PA  多くとも
     su'o    PA  少なくとも
     me'i    PA  <
     za'u    PA  >

セルマホ PA のシマヴォ「ji'i」で近似値や丸め値を表す方法はいくつかある。ある数の最初に付くと、その数全体の近似を表す。

9.1)   ji'i vo no
       およそ 40
「ji'i」がある数の中間に付くと、その後に続く桁が近似であることを表す。
9.2)   vo no ji'i mu no
       およそ 4050 、四千は正確だが、五十は近似。
「ji'i」がある数の最後に付くとその数が丸め値であることを表す。さらに、「ji'i」の後に「ma'u」か「ni'u」の正負号シマヴォを付けることができ、その場合はそれぞれ、無限小数の切り上げ・切り捨てを表す。
9.3)   re pi ze re ji'i
       2.72 (丸め # 10進法では四捨五入9.4)   re pi ze re ji'i ma'u
       2.72 (切り上げ)

9.5)   re pi ze pa ji'i ni'u
       2.71 (切り捨て)
例9.3から例9.5は、すべて「te'o」(自然対数の底 e)の近似値である。「ji'i」は単独で用いることもでき、その場合は「およそ、その文脈で典型的な値」という意味になる。

4つのシマヴォ「su'e」「su'o」「me'i」「za'u」もセルマホ PA に属する。これらは、上限か下限のある不正確な数を表す。

9.6)   mi catlu su'e re prenu
       私は多くとも2人の人を見る。

9.7)   mi catlu su'o re prenu
       私は少なくとも2人の人を見る。

9.8)   mi catlu me'i re prenu
       私は2人より少ない人を見る。

9.9)   mi catlu za'u re prenu
       私は2人より多くの人を見る。
これらは微妙に異なる主張をしている。例9.7は2人以上について真だが、例9.9は3人以上でなければならない。同様に、例9.6は0人か1人か2人を意味し、例9.8は0人か1人である。(もちろん、文脈上、0以上の整数と限らない場合は、「me'i re」で2より少ないどの数も指せる。他の例についても同様である。)「ちょうどぴったり2」という正確な量を表す数量詞は、単に「re」である。# 日本語の「私は2人は見た(実際にはそれより多いかもしれない)」という量に対応するのは「su'ore」である。

これらのシマヴォの後に何も数が付かないときは、デフォルトで「pa」であると見なされる。したがって

9.10)  mi catlu su'o prenu
       私は少なくとも1人の人を見る。
という主張にも意味がある。

第8節の数と同様に、これらのシマヴォの前に「pi」を付けて、全体の中の一部分を表す数量詞にすることができる。例えば「pisu'o」は「少なくともある量の」という意味だ。数量詞「ro」「su'o」「piro」「pisu'o」はロジバンでは特に重要である。これらは、第6章で説明したように、セルマホ LA や LE に属するシマヴォによって導入される描写スムティの中で暗黙的に使われるからである。一般の描写については、本章の範囲外だ。

10. 非10進法と、異なる底の複合

この節では以下のシマヴォが議論される。

    ju'u     VUhU    位取り記数法の底

    dau      PA      16進法の数字 A = 10
    fei      PA      16進法の数字 B = 11
    gai      PA      16進法の数字 C = 12
    jau      PA      16進法の数字 D = 13
    rei      PA      16進法の数字 E = 14
    vai      PA      16進法の数字 F = 15
    pi'e     PA      異なる位取り記数法の数分離

普通の文脈では、ロジバンの数はデフォルトで10進法(10を底とする位取り記数法)で表されていると見なされる。しかし、他の底を取ることも可能であり、特定の状況では他の底の方が適切だろう。

位取り記数法の底を指定するには、 VUhU に属する演算子「ju'u」を使うと良い。

10.1)  li pa no pa no ju'u re du li pa no
       2進数1010は、(10進)数10に等しい。
この末尾に現れる「pa no」は、いつものように10進数であると見なされることになっている。恒常的に10以外の底を指定しておきたい場合は、メタ言語で明記すれば良いが、そのための標準的な表現はまだ決まっていない。

ロジバンには16までの底を表す数字がある。これは、コンピュータ・アプリケーションで16という底がよく使われるためだ。慣習的には、16進数の10から15までの数字には A から F までのラテン文字が当てられている。ロジバンではこのような曖昧な表現が避けられている。

10.2)  li daufeigai ju'u paxa du li rezevobi
       16進数ABCは、(10進)数2748に等しい。

10.3)  li jaureivai ju'u paxa du li cimuxaze
       16進数DEFは、(10進)数3567に等しい。
これらのシマヴォの形に注意しよう。二重母音「au」「ei」「ai」が同じ順番で2回繰り返されている。AからDまでは、10進数のシマヴォで使われていない子音を使っている。EとFは残念ながら2 re と4 vo のシマヴォと同じ子音になる。これは単に、全部の子音が違うようにするほど十分なシマヴォ空間を確保できなかったせいだ。これらのシマヴォの順番はアルファベット順である。

底の位置を表す「pi」は、10進法以外でも同じように使われる。

10.4)  li vai pi bi ju'u paxa du li pamu pi mu
       16進数F.8は、(10進)数15.5に等しい。
「ju'u」はセルマホ VUhU に属する演算子なので、左の項としてどんな被演算子が来ても、文法的に正しい。しかし意味論的には、数字の列以外のものが左に来るような使い方は定義されていない。それでも「ju'u」を演算子としている理由は、定数ではない底を指すことができるようにするためだ。

「底」として変数をとることを要する数値は、いくつか存在する。例えば、時 :分:秒で表される時間は、実際3つの数値から成る。1番目の底は24であり、2番目と3番目の底は60である。 こういう数を表すためには、複合された異なる底を分離する「pi'e」が使われる。

10.5)  ci pi'e rere pi'e vono
       3:22:40
各「pi'e」によって分離されたそれぞれの数字は、10進法で書かれているものの、この数全体は10進数ではなく、この数の足し算や引き算は、特別な規則に従う。
10.6)  li ci pi'e rere pi'e vono su'i pi'e ci pi'e cici du li ci pi'e rexa pi'e paci
       3:22:40 + 0:3:33 = 3:26:13
もちろん、例10.5例10.6の数の1番目の部分が「時」、2番目の部分が「分」、3番目の部分が「秒」であるということは、文脈からしかわからない。

「pi'e」を使う同じ仕組を、16よりも大きい底を持つ数を表すためにも使える。例えば、20を底とするマヤの数学なら、「no」から「paso」までの数字を使い、各桁を「pi'e」で分離すれば良い。

10.7)  li pa pi'e re pi'e ci ju'u reno du li vovoci
       20を底とする数 1;2;3 は、(10進)数 443 に等しい。

以下の2つの例が異なるものを表すことに注意しよう。

10.8)  pano ju'u reno
       20を底とする数 10
これは10進数の10に等しい。一方、
10.9)  pa pi'e no ju'u reno
       20を底とする数 1;0
これは10進数の20に等しい。

「pi」と「pi'e」は両方とも、底が大きい数の小数を表すのに使える。

10.10) li pa pi'e vo pi ze ju'u reno du li re vo pi ci mu
       20を底とする数 1;4.7 は、(10進)数 24.35 に等しい。
「pi'e」は、各数字の底が漠然としている場合にも使える。例えば本章の例番号は以下のように表せる。
10.11) dei jufra panopi'epapamoi
       この発話は文 10.11 である。

11. 特別なメクソ・セルブリ

この節では以下のシマヴォが議論される。

     mei     MOI     基数セルブリ
     moi     MOI     序数セルブリ
     si'e    MOI     分量セルブリ
     cu'o    MOI     確率セルブリ
     va'e    MOI     段階セルブリ

     me      ME      スムティをセルブリにする

     me'u    MEhU    ME の終端詞

ロジバンには、メクソに基づくセルブリから成る、特別なカテゴリがある。そういうセルブリのうち最も単純なものは、、数の直後にセルマホ MOI に属するシマヴォを付けることによって得られる。 MOI には5つのシマヴォが属し、それぞれ特定の PS を持つ、数に基づくセルブリを作るのに用いられる。

シマヴォ「mei」は基数セルブリを作る。その基本的な PS は以下のようになる。

       x1 は基数 n に対等な集合 x2 が形成する群れ (mass) であり、その集合の元の1個以上が x3 である
# 原文では「the set x2 of n members」となっているが、 x2 が無限集合となる場合を考慮して、「基数 n に対等な集合 x2」と訳した。本節の以下の文章も、これに準ずる形で訳した。
解説(岩波『数学辞典』第4版より、一部改変):
集合 A を定義域、集合 B を値域とする 1-1 対応が存在するときに、「A に B が 対等である」という。
集合 A に対等な集合のクラス(集まり)を、「集合 A の濃度」という。
順序数 α が α に対等な順序数の中で最小なものであれば、α は基数と呼ばれる。
集合 A が適当な順序で整列可能であれば、A と同じ濃度を持つ基数が存在する。
選択公理の下では任意の集合が整列可能なので、集合の濃度をそれと対等な基数で表すのが一般的である。
基数セルブリは、集合と、その集合に対等な基数 n ・その集合が形成する群れ・その集合の元を相互に関連付ける。群れの項は便利さのために x1 に置かれるが、このことに論理的必然性はない。

いくつか例を挙げよう。

11.1)  lei mi ratcu cu cimei
       私の鼠は3匹だ。
この例では、私の鼠という群れが3つの構成要素を持つということを言っている。つまり私の鼠が3匹だということだ。

今度は、元が1個である例を挙げよう。

11.2)  mi poi pamei cu cusku dei
       1人である私がこの発言をしている。
例11.2では、「mi」が「私からなる群れ」という群れを指している。人称代名詞は群れ・集合・個の区別が漠然としている。

しかしながら、「-mei」の前に付く数が、第8節で説明したような、客観的な不定の数であるときは、やや異なる PS を要する。

       x1 は基数 n に対等な集合 x2 が形成する群れ (mass) であり、その集合の元の1個以上が x3 であり、集合 x4 と比較した量である。

例を挙げよう。

11.3)  lei ratcu poi zvati le panka cu so'umei fo lo'i ratcu
       公園にいる鼠の群れは、全ての鼠の集合と比較して少ない。
例11.3では、 x2 と x3 の場所がからっぽで、 x4 の場所には「lo'i ratcu」が入っている。これは、数量詞が明示されていないので、「鼠であるもの全ての集合全体」を意味する。簡単に言えば「全ての鼠の集合」だ。
11.4)  le'i ratcu poi zvati le panka cu se so'imei
       その公園にいる鼠の集合は、大きい基数の集合だ。
例11.4では、転換シマヴォ「se」が x1 と x2 の場所を入れ替えているので、 x1 が集合になっている。比較対象となる集合 x4 は特定されていないので、意味合いとしては、鼠がある不特定の比較対象となる集合に対して「多い」ということだ。

集合と群れと個の相互関係については、第6章でもっと詳しく説明されている。

シマヴォ「moi」は序数セルブリを作る。その PS は以下のようになる。

       x1 は集合 x2 の、規則 x3 に従って並んだ n 番めの元
いくつか例を挙げよう。
11.5)  ti pamoi le'i mi ratcu
       これは私の1番めの猫だ。

11.6)  ta romoi le'i mi ratcu
       これは私の最後の猫だ。

11.7)  mi raumoi le velskina porsi
       私は映画鑑賞客の列のかなり後ろの方だ。
例11.7は、適切な文脈では、映画の座席を取る列の中の私の位置が、一番前から充分遠いという意味だ。

シマヴォ「si'e」は分量セルブリを作る。その PS は以下のようになる。

       x1 は群れ x2 の n 倍の分量
# 原文は「an (n)th portion」なので、文字通りに訳すと「n分の1」だが、以下の例から分かるように、分数 (fi'u) の意味自体は si'e に含まれていないので、この表現は不適切だ。また、数量詞 n が分数の形でなくても、意味上の問題は無い。 関連議論
例を挙げよう。
11.8)  levi sanmi cu fi'ucisi'e lei mi djedi cidja
       この食事は私の1日の食べ物の3分の1の分量だ。

シマヴォ「cu'o」は確率セルブリを作る。その PS は以下のようになる。

       事象 x1 が条件 x2 の下で発生する確率は n
この数は 0≦n≦1 でなければならない。例えば
11.9)  le nu lo sicni cu sedja'o cu pimucu'o
       硬貨が頭を表示する確率は0.5
# sedja'o は stedu jarco (頭-表示)から作られたルジヴォで、英語表現 head-display のロジバンへの直訳になっている。硬貨のデザインとして人の頭部が描かれているものについては、このルジヴォが使えそうだが、そうではない絵柄の硬貨には適用できないかもしれない。 pixra jarco (絵-表示)から xraja'o というルジヴォを作って sedja'o の代わりに使えば、より多くの硬貨に適用できる表現となるだろう。

シマヴォ「va'e」は段階セルブリを作る。その PS は以下のようになる。

       x1 は段階 x2 上の段階位置 n にある
段階が連続的ではなくて離散的である場合は、「cifi'uxa」 (3/6) といった形も使える。この場合の 3/6 は、 1/2 とは違う意味だ。つまり、6段階の3番めの位置と、2段階の1番めの位置は異なる。例を挙げよう。
11.10) le vi rozgu cu sofi'upanova'e xunre
       この薔薇は10段階の9の度合で赤い。

MOI シマヴォに接頭する数量詞に、主観的な数「rau(充分)」「du'e(過多)」「mo'a(過少)」が含まれているときは、「~の基準で」という場所が追加される。例えば

11.11) lei ratcu poi zvati le panka cu du'emei fo mi
       その公園にいる鼠の群れは私にとって多すぎる。
この追加された場所(「-mei」の場合は x4 で、 fo が付く)は、「ma'i」のような BAI タグの代わりに使われる。なぜなら、判断基準の特定は「充分」のような主観的な単語の意味に本質的だからである。

この場所は、主観的な数の1つを数として直接扱うときは、必ずしも明示されない。従って、「du'e ratcu」は「多すぎる鼠」を意味し、判断基準は特定されていない。

数をレルフ列に置き換えても文法的に正しい。

11.12) ta ny.moi le'i mi ratcu
       それは私の鼠の集合の第n番めだ。

もっと複雑なメクソは、そのままでは MOI の直前に置くことができない。もしそれを許すと、文法的に曖昧になってしまうからだ。 MOI の前に複雑なメクソを置く場合は、何らかの人工的な表現形式を要する。

シマヴォ「me」(セルマホ ME に属する)は、スムティをセルブリにする機能がある。「me」構造全体の末尾に MOI 類を付けて、複雑なメクソ・セルブリを作ることができる。

11.13) ta me li ny. su'i pa me'u moi le'i mi ratcu
       それは私の鼠の集合の第(n+1)番めだ。
このメクソ「ny. su'i pa」は「li」によってスムティ化し、さらに「me」と「me'u moi」によってメクソ・セルブリ化している。省略可能な終端詞「me'u」は、ここでは省略できない。それは「pa」と「moi」がくっつかないようにするためだ。そうしないと、パーサはこの2つを繋げて「pamoi」と解釈し、文全体を文法違反として拒否してしまう。

「me」の後、 MOI 類の前に数字以外のスムティを使うことは全く可能であり、奇妙な結果をもたらす。

11.14) le nu mi nolraitru
            cu me le'e snime bolci be vi la xel. cu'o
       私が王であることは、典型的な地獄の雪玉の確率だ。
注:省略可能な終端詞「boi」は、数字と MOI 類との間では使われない。その結果、例11.13の「me'u」を「boi」に置き換えた形も可能になる。この「boi」も「me'u」と同様に、「pa」と「moi」が繋がってしまうのを防ぐ機能がある。

12. 数質問

この節では以下のシマヴォが議論される。

      xo      PA      数質問
セルマホ PA に属するシマヴォ「xo」は、回答として数を求める質問をするために使われる。他のほとんどのロジバン疑問詞と同様に、答えが入るべきところを埋める形で使われる。ロジバンの質問については第19章を参照。
12.1)  li re su'i re du li xo
       2 + 2 = ?

12.2)  le xomoi prenu cu darxi do
       何番めの人があなたを叩きましたか?

「xo」は、他の数字と組み合わせて使うこともできる。これによって、部分的には既に特定されている数の、不明部分だけを質問することができる。このことは、初等計算力を確かめるペーパーテストで役に立つかもしれない。

12.3)  li remu pi'i xa du li paxono
       25 × 6 = 1?0
この設問の正しい答えは「mu (5)」となるだろう。数字を単独で発音しても、文法的に正しいロジバン文とみなされるが、このように決めている第1の理由は、「xo」質問に対する回答を与えることができるようにしたいからだ。(別の使い方としては、明らかに、物理的な対象を1つずつ数えあげることだ。)

13. 添字

この節では以下のシマヴォが議論される。

     xi      XI      添字
添字を付ける機能は一般のロジバン文で使われ、メクソだけで使われるものではない。論理的に添字を付けられるものはたくさんある。文法上、添字は自由修飾詞であり、ほとんどどこにでも置ける。もちろん、メクソ変数(レルフ列)にも添字を付けることができる。
13.1)  li xy.boixici du li xy.boixipa su'i xy.boixire
       x3  = x1  + x2
添字は常に、セルマホ XI に属する指標「xi」で始まる。「xi」の後には、数、レルフ列、括弧に入れた一般のメクソ式を置くことができる。
13.2)  xy.boixino
       x0

13.3)  xy.boixiny.
       xn

13.4)  xy.boixi vei ny. su'i pa [ve'o]
       xn+1
レルフ列(変数)に直接添字を付けるときは、一般に、変数の終端を示す「boi」が必要だ。添字は自由修飾詞の一種であり、自由修飾詞を付ける場合は一般に、他のところで省略可能な終端詞を、特に明示する必要がある。

上付き添字の取扱い(累乗として使われる以外)や、式の前に付ける上付きや下付きの添字の取扱いについては、標準的な方法が無い。必要であれば、これらの目的のために、セルマホ XI に属する新たなシマヴォが作られるかもしれない。

添字用の省略可能な終端詞は、数字やレルフ列と同じで「boi」である。慣習として、添字が別の添字に付くと、添字の添字と見なされる。

13.5)  xy.boi xi by.boi xi vo
       xb4
単一の対象に複数の添字を付ける標準的な方法については、例17.10を参照。

添字の使い方についてもっと知りたい場合は第19章を参照。

14. 中置型演算子を再訪

この節では以下のシマヴォが議論される。

     tu'o    PA      ヌル被演算子
     ge'a    VUhU    ヌル演算子
     gei     VUhU    指数表記

これまでに出てきた中置型演算子は、常に被演算子が2個きっかりに限られていたので、それ以外の個数の被演算子を扱う場合は前置型演算子が必要だった。しかし、被演算子の個数が2以外でも、ある2つのトリックを使うと、中置型で演算子を使うことが可能になる。そのトリックとは、ヌル被演算子「tu'o」と、ヌル演算子「ge'a」である。「tu'o」は被演算子が足りないときに使う。「ge'a」は被演算子が多すぎるときに使う。例えば数値否定演算子「va'a」を中置型で表したいとしよう。その場合は「tu'o」を使って以下のように表す。

14.1)  li tu'o va'a ny. du li no vu'u ny.
       -n = 0 − n
「tu'o」は「va'a」を中置型として使うための左側の被演算子として、文法上の要求を満たす。ただし意味論上は何も要求されない。

「ge'a」の適当な例を見つけるには、3項演算子を表す必要があるが、3項演算子はあまり多くない。しかし「gei」は2項演算子としても3項演算子としても使える。2項演算子としては、「gei」は指数表記の簡潔な表現法を与える。「gei」の第1項は指数部であり、第2項は仮数部である。

14.2)  li cinonoki'oki'o du
            li bi gei ci
       300,000,000 = 3 × 108
なぜ「gei」の項は、慣習的な記号表記と逆の順番になっているのか?それは「gei」を前置型として使って、大雑把な大きい数・小さい数を簡単に表すことができるようにするためだ。
14.3)  gei reno
       1020
# そうすれば、中置でも前置でも第1項が指数部になる。
指数の底として10が使われることが多いが、他の数を底とすることも可能だ。そのため、「gei」の第3項は底であり、そのデフォルトの値は10とされる。ほとんどのコンピュータでは、いわゆる「浮動小数点」数を、2を底とする指数として記憶する。(このことは、コンピュータがすべての整数を2進法で表すことと何の関係もない。 IBM 360 シリーズは浮動小数点数を表すのに16を底とする指数を使ったが、その数の各構成要素は2進数だった。)コンピュータにおける浮動小数点数で、40という値を表すと、以下のようになる。
14.4)  papano bi'eju'u re gei pipanopano bi'eju'u re ge'a re
       .10102 × 21102
# 10進数で表すと (5×2(-3))×26

15. ベクトルと行列

この節では以下のシマヴォが議論される。

     jo'i    JOhI    ベクトル開始
     te'u    TEhU    ベクトル終了
     pi'a    VUhU    行列の行結合子
     sa'i    VUhU    行列の列結合子

数学のベクトルは数のリストであり、行列は数の表である。ロジバンでは、行列はベクトルから構成されると考え、ベクトルは被演算子から構成されると考える。

セルマホ JOhI の唯一のシマヴォ「jo'i」は、ベクトルのフラグである。これは前置型演算子の構文に似ているが、統語論上の優先順位が非常に高い(# 右に来る語との結合が非常に強い)。だから、ベクトルの成分は単純な被演算子でなければならず、複雑な式をベクトルの成分とする場合には、括弧を付ける必要がある。1つのベクトルの中に入る成分の個数はいくつでも良い。「te'u」は省略可能な終端詞である。ベクトルの例:

15.1)  li jo'i paboi reboi te'u su'i jo'i ciboi voboi du
            li jo'i voboi xaboi
       (1,2) + (3,4) = (4,6)

ベクトルを寄せ集めて行列にすることができる。1つのベクトルを行として、行列の行結合子「pi'a」で結合するか、あるいは1つのベクトルを列として、行列の列結合子「sa'i」で結合する。どちらの方法でも、行列の成分は何個でも良い。3つめ以降の成分は、ヌル演算子「ge'a」を使って追加する。

だから、「魔方陣」行列

       8 1 6
       3 5 7
       4 9 2
は、以下のように、2つの方法で表すことができる。
15.2)  jo'i biboi paboi xa pi'a jo'i ciboi muboi ze ge'a jo'i voboi soboi re
       ベクトル (8 1 6) 行結合 ベクトル (3 5 7) 同 ベクトル (4 9 2)
15.3)  jo'i biboi ciboi vo sa'i jo'i paboi muboi so ge'a jo'i xaboi zeboi re
       ベクトル (8 3 4) 列結合 ベクトル (1 5 9) 同 ベクトル (6 7 2)
普通のメクソ演算子は、ベクトルにも行列にも適用できる。ベクトルも行列も文法的には式であるからだ。行列を演算子と一緒に使うときは、間違った範囲でグループ化してしまわないように、常に行列を括弧で括る必要がある。行列の内積や外積用の VUhU 演算子は無いが、「ma'o」を接頭したレルフやレルフ列の記号を使って、適切な演算子を作成することができる。

2次元より大きな次元の行列は、「pi'a」や「sa'i」に、次元を表す数の添字を付けて使うことによって、構成することができる。添字が付いているときは、「pi'a」と「sa'i」との違いは無い(# どちらを使っても同じ)

16. 逆ポーランド記法

この節では以下のシマヴォが議論される。

     fu'a    FUhA    逆ポーランド記法のフラグ
これまでは、ロジバンの記法の約束事が、数学的論説でよく出てくる表現にきちんと対応していた。前置型演算子を「+」に当てはめるのは奇妙に見えたかもしれないが、関数の記号「f」に当てはめてみれば、普通の関数表記の形をしている。これから紹介する逆ポーランド (Reverse Polish, RP) 記法はまったく違う。数学者でもこの記法はあまり使わない。(実際、 RP が使われる場面というのは、ある種の電卓と、いくつかのプログラミング言語の処理系だけだ。)

RP 記法では、演算子が被演算子の後に来る。(ポーランド記法というのは、演算子が被演算子の前に来る、第6節で説明した前置型メクソの別名だ。)被演算子の個数は常に演算子ごとに固定されている。括弧は必要ないし、付けてはいけない。ロジバンの RP 記法には、常に明示的に式の冒頭に「fu'a」を付ける。終端詞は無い。以下は簡単な例だ。

16.1)  li fu'a reboi ci su'i du li mu
       数 (RP!) 2と3の和 = 数 5
この例の被演算子は「re」と「ci」であり、演算子は「su'i」だ。

以下はもっと複雑な例だ。

16.2)  li fu'a reboi ci pi'i voboi mu pi'i su'i du li rexa
       数 (RP!) (2と3の積)と(4と5の積)の和 = 数 26
この例では、1個めの「pi'i」の被演算子は「re」と「ci」、2個めの”「pi'i」の被演算子は「vo」と「mu」(「boi」を必要に応じて入れる)、「su'i」の被演算子は「reboi ci pi'i」すなわち6と、「voboi mu pi'i」すなわち20だ。逆ポーランド記法で表すと混乱しやすいように見えるかもしれないが、記憶容量が大きい機械的な聞き手にとっては理解しやすい。

メクソ被演算子として正しいものなら何でも、 RP 演算子の被演算子とすることができる。 RP 演算子の被演算子は、括弧で括ったメクソでも良い。その括弧内には、正しい構文なら何でも入れることができ、 RP でも慣用の記法に沿った形でも良い。

ロジバンの構文解析では常に、1個の RP 演算子が係る被演算子の個数は、2個に限られる。被演算子を1個しか必要としない演算子や、3個以上必要とする演算子を表すときは、ヌル被演算子「tu'o」やヌル演算子「ge'a」を利用する。「va'a」のような、被演算子を1個しか持たない演算子を逆ポーランド記法で表すときは、常に「tu'o va'a」という形になる。「tu'o」は2個めの被演算子で、意味論的には無視されるが、文法的には必要だ。同様に、「gei」が被演算子を3個とる場合を逆ポーランド記法で表すと、「ge'a gei」という形になる。構文上この「ge'a」は、第2・第3の被演算子に係って、全体として「gei」の2個めの被演算子となっている。以下に例を示す。

16.3)  li fu'a ciboi muboi vu'u du
            li fu'a reboi tu'o va'a
       3 − 5 = -2

16.4)  li cinoki'oki'o du
            li fu'a biboi ciboi panoboi ge'a gei
       30,000,000 = 3 × 108

17. メクソ内の論理接続と非論理接続

この節では以下のシマヴォが議論される。

     .abu    BY      文字「a」
      by     BY      文字「b」
      cy     BY      文字「c」
      fe'a   VUhU    n乗根 (デフォルトで2)
      lo'o   LOhO    LI の終端詞

ロジバンは、論理的な言語として当然、演算子にも被演算子にも、論理接続のための広範な備えがある。論理接続と非論理接続の詳細は第14章にある。被演算子は、スムティと同様に、後置型接続にはセルマホ A 、前置型接続にはセルマホ GA を使う。演算子は、タンルの構成要素と同様に、後置型接続にはセルマホ JA 、前置型接続にはセルマホ GUhA を使う。この類似性は偶然ではない。

さらに、論理接続した被演算子をグループ化するために、 A+BO と A+KE という構成が許される。また、論理接続した演算子をグループ化するために、「ke ... ke'e」という構成が許される。ただし、演算子間では、タンルの構成要素間と似たような関係は成り立たない。

この特徴を成立させるために膨大な個数の規則を要するにもかかわらず、メクソ体系の中では大して重要ではない。例17.1は被演算子間の後置型論理接続を表している。

17.1)  vei ci .a vo ve'o prenu cu klama le zarci
       3人か4人の人が店に行く。
例17.2例17.1と同じ意味だが、前置型接続を使っている。
17.2)  vei ga ci gi vo ve'o prenu cu klama le zarci
       3人か4人の人が店に行く。
このメクソは数量詞として使われている。ロジバンでは、単なる数以外のどんなメクソも、数量詞として使われるときには括弧で括らなくてはいけない。この規則によって、曖昧になることが避けられる。「li」を使うときには、このような曖昧性は無い。

ところで「li」には省略可能な終端詞「lo'o」がある。これは「li」スムティの後に論理接続が来る場合に必要になる。「lo'o」が無いと、その論理接続がメクソ内の接続であるかのように見えるからだ。例えば

17.3)  li re su'i re du
            li vo lo'o .onai lo nalseldjuno namcu
       数 2+2 は 数 4 あるいは 未知数 のどちらか一方だけに等しい。
この「lo'o」を省略すると、パーサは「.onai」の後に別の被演算子が来るはずだと考え、「lo」を無効な被演算子と見なして拒否してしまう。

論理接続を演算子間に使う単純な例はなかなか見つからないが、何とかひねり出したのが以下の例だ。

17.4)  li re su'i je pi'i re du li vo
        2 + 2 = 4 かつ 2 × 2 = 4.
例17.4を前置型接続の形で表すと以下のようになる。
17.5)  li re ge su'i gi pi'i re
            du li vo
       2 + 2 = 4 かつ 2 × 2 = 4.
以下は演算子の論理接続の古典的な例だ。
17.6)  go li .abu bi'epi'i vei xy. te'a re ve'o su'i by. bi'epi'i xy.
            su'i cy.  du li no
       gi li xy. du li vei va'a by. ku'e su'i ja vu'u
            fe'a vei by. bi'ete'a re vu'u vo bi'epi'i .abu bi'epi'i cy. ve'o [ku'e] ve'o
            fe'i re bi'epi'i .abu
       ax2  + bx + c = 0 の場合に限り
            x = -b ± (b2  − 4ac)
            
                         2a
例17.6の中で、いくつかの形式が混在していることに注意しよう。 b の加法逆元と2乗根は前置型で表され、優先的に計算する演算子には大抵が「bi'e」が接頭されているが、分子を正しくグループ化するために、括弧を明示する必要がある。さらに、2乗根は「fe'a」と「ku'e」で括られているが、その中の括弧はここでは省略できない。なぜなら被演算子の中に中置型演算子が含まれているからだ。例17.6 を現存のパーサで完全に解析できる形にするまで、何度か試行錯誤した。もっと楽な形式なら、「bi'e」をほとんど使わないで、標準的な優先順位の規則がわかる形にできるだろう。

JOI と BIhI による非論理接続も、被演算子間や演算子間で使ってよい。この構造の用途の1つは、被演算子を「bi'o」と接続して区間を表すことだ。

17.7)  li no ga'o bi'o ke'i pa
       [0,1)

両端によって指定する代わりに、「mi'i」を使って、中央点と幅によって区間を指定することもできる。

17.8)  li pimu ga'o mi'i ke'i pimu
       数 0.5 ± 0.5
これは例17.7と同じ区間を表す。ここでも「ga'o」と「ke'i」が両端を指定していることに注意しよう。ロジバンではこのように両端を明示しているが、慣用表記 0.5 ± 0.5 では、この意味が明示されていない。同じことを以下のように表すこともできる。
17.9)  li pimu su'i ni'upimu bi'o ma'upimu
       数 0.5 + [-0.5 区間 +0.5]
ここでは数の和と区間によって、数を中心とする別の区間を表している。例17.9からわかるように、被演算子の非論理接続は(論理接続も)メクソ演算子よりも優先順位が高い。

2つの被演算子を、セルマホ JOI の順序接続「ce'o」でつなげて、合成添字にすることもできる。

17.10) xy. xi vei by. ce'o dy. [ve'o]
    xb,d

18. メクソ内でロジバンの資源を使う

この節では以下のシマヴォが議論される。

     na'u    NAhU    セルブリを演算子に
     ni'e    NIhE    セルブリを被演算子に
     mo'e    MOhE    スムティを被演算子に
     te'u    TEhU    上の3つの終端詞

メクソ設計の目標の1つとして、ロジバンの語彙資源をメクソ内で使って、既存の演算子や被演算子のシマヴォを拡張することができるようにする必要がある。この目的に適用される構造は3つあり、どの構造でも、省略可能な終端詞「te'u」を使う(この終端詞は「jo'i」で始まるベクトルの終端詞としても使われる)。

シマヴォ「na'u」はセルブリを演算子に変える。一般に、セルブリの1番めの場所が演算結果を示し、それ以外の場所が被演算子を示す。

18.1)  li na'u tanjo te'u vei pai fe'i re [ve'o] du li ci'i
       tan(π/2) = 
「tanjo」は「x1 は x2 のタンジェント」というギスムで、「na'u」がそれを演算子に変え、その演算子が前置型として使われている。

シマヴォ「ni'e」はセルブリを被演算子に変える。そのセルブリの場所 x1 は一般に数を表すので、「ni」による数量抽象であることが多い。「ni'e」はその数をメクソ被演算子として利用できるようにする。よくある使い方として、次元の関係を表す等式を作ることができる。

18.2)  li ni'e ni clani [te'u] pi'i ni'e ni ganra [te'u] pi'i
            ni'e ni condi te'u du li ni'e ni canlu
       長さ × 幅 × 深さ = 体積
シマヴォ「mo'e」は「ni'e」と似た働きをするが、セルブリではなくてスムティを被演算子にする。この構造は、次元が付いた数を含んだ等式を表すときに役立つ。
18.3)  li mo'e re ratcu su'i mo'e re ractu du li mo'e vo danlu
       2 鼠 + 2 兎 = 4 動物
# この式では、鼠と兎と動物が同じ次元であると見なされている。
# 異なる次元を扱う式の例としては、以下のようなものが考えられるだろう。
# li mo'e panonoki'o remna fe'i mo'e binoki'o zdani ku du li papiremu pi'i vei ni'e ni remna fe'i ni'e ni zdani ve'o
# 100000人 / 家80000軒 = 1.25 人/軒
他の使い方として、いわゆる「一族数量詞 (folk quantifiers)」のロジバン版を構成することができる。例えば「ライオンの群れ」は、「mo'e」を使って以下のように表すことができる。
18.4)  mi viska vei mo'e lo'e lanzu ve'o cinfo
       私は(典型的な家族の個体数)のライオンを見る。

19. それ以外のメクソの使い方

この節では以下のシマヴォが議論される。

     me'o    LI      メクソ
     nu'a    NUhA    演算子をセルブリに
     mai     MAI     発話順序
     mo'o    MAI     高次の発話順序
     roi     ROI     数量間制

これまでは、「li」が付いてスムティとして使われるメクソ、数量詞として(多くは括弧付きで)使われるメクソ、 MOI や ME-MOI セルブリの中で使われるメクソを見てきた。ロジバンには他にもメクソの使い方がいくつかある。

シマヴォ「me'o」の文法上の使い方は「li」と同じだが、意味論的な違いがある。「li」は「メクソ...の値である数」を意味するが、「me'o」は「メクソ...」そのものを意味する。従って、

19.1)  li re su'i re du li vo
       2 + 2 = 4
は正しいが、
19.2)  me'o re su'i re du me'o vo
       “2 + 2” = “4”
は間違いだ。なぜなら、「2 + 2」という式と「4」という式は同じ式ではないからだ。「li」と「me'o」の違いは、ジョンという名前の人「la djan.」とジョンという名前「zo .djan.」との違いに対応している。

シマヴォ「nu'a」は「na'u」の逆で、メクソ演算子を普通のセルブリとして使えるようにする。そのセルブリの PS は以下のようになる。

       x1 は x2, x3, ...に[演算子]を適用した結果
x2 以降の場所の個数は被演算子の個数によって決まる。例えば
19.3)  li ni'umu cu nu'a va'a li ma'umu
       数 -5 は 数 +5 の加法逆元である。
では「nu'a」を使って、演算子「va'a」を場所2つのセルブリに変えている。

演算子を問うための特定のシマヴォは無いし、1つの演算子を単独で発話しただけでは文法的に正しくないが、「nu'a」と「na'u」を一緒に使うと、メクソ演算子についての質問ができるようになる。質問例19.4とその正しい解答例19.5について考えよう。

19.4)  li re na'u mo re du li vo
       2 ? 2 = 4

19.5)  nu'a su'i
       +
例19.4では、「na'u mo」が1つの演算子質問である。なぜなら「mo」はセルブリ質問のシマヴォであり、「na'u」がそのセルブリを演算子に変えているからだ。例19.5は正しい解答「su'i」が文法的に正しい発話となるように、「nu'a」を使って演算子をセルブリに変えている。機械的には、例19.5例19.4の mo に代入すると
19.6)  li re na'u nu'a su'i re du li vo
       数 2(演算子化 セルブリ化 +)2 = 数 4
となり、「na'u nu'a」が打ち消しあって、真であるブリディが残る。

「第1に」「第2に」といった数値的な自由修飾句は、セルマホ MAI に属するシマヴォを数字列やレルフ列に付けて作ることができる。(数字列とは、合成シマヴォで、セルマホ PA のシマヴォで始まり、 PA か BY のシマヴォだけを含むものだ。レルフ列とは、セルマホ BY のシマヴォで始まり、 PA か BY のシマヴォだけを含むものだ。)以下に例を挙げる。

19.7)  pamai
       第1に

19.8)  remai
       第2に

19.9)  romai
       最後に

19.10) ny.mai
       n番めに

19.11) pasomo'o
       第19節に
「mai」と「mo'o」の違いは、「mo'o」の方が文章をより大きく分割したものであることだ。「mo'o」が付いた各分割部分を、さらに細かく分割して、その各部分を「mai」で番号付けることができる。もし本章をロジバンに訳すなら、各節が「mo'o」によって番号付けられる。(これらの語について詳しくは第19章を参照。)

数量間制は数字の後に「roi」を付けて作る。これによって、「1回」「2回」といった間制を作ることができる。これはロジバンの間制の話になるので、詳しくは第10章に説明されている。

注:省略可能な終端詞「boi」は、数と MAI 類・ ROI 類との間では使われない。

20. 明示的な演算子の優先順位

既に言及したように、ロジバンには演算子の優先順位を明示的に述べる方法がある。ただし、現行のパーサは優先順位の宣言を解さない。

優先順位は、セルマホ「sei」に属するシマヴォ「ti'o」を使った、メタ言語的なコメントの形で宣言される。同じく SEI に属する別のシマヴォ「sei」は、ブリディについてのメタ言語的コメントを挿入するために使われる。このコメントは、そのブリディを含む談話についての情報を与える。「ti'o」宣言の形式は確立されていないが、おそらく、メクソ演算子に言及し、あらかじめ決められた優先順位の段階軸上の位置を示す絶対数をメクソ演算子に与えるか、あるいは、新しい演算子と既存の演算子との相対的な優先順位を指定するという形をとるだろう。

将来はパーサを改良して、セルマホ VUhU に属する単純な演算子の優先順位の宣言を解するものにしたい。本来は、すべての演算子の優先順位は等しい。優先順位を宣言することによって、 VUhU に属する特定のシマヴォの優先順位を引き上げることになる。「na'u」、「ni'e」、「ma'o」で構成される複合演算子の優先順位は、低いまま保持される。これらの複合演算子に関する宣言については、将来の努力に任される。そのパーサには、掛け算を足し算より優先させるなどの、数学的直観に合致した「通常仮定される優先順位」の集合が組み込まれ、特別な「ti'o」宣言1つで、その集合を選択できるようになるだろう。

21. 雑録

「se」はセルブリに付くのと同じように、演算子の被演算子の場所を転換するのにも使える。例えば

21.1)  li ci se vu'u vo du li pa
       3 を 4 から引くと 1
セルマホ SE に属する他のシマヴォも、3個以上の被演算子を持つ演算子に使える。また、それらを合成して(わかりにくい)演算子を作ることもできる。

セルマホ NAhE に属するシマヴォを演算子に付けて段階否定することも、文法的に認められている。その意味は、別の演算子ならブリディが真となるということだ。

21.2)  li ci na'e su'i vo du li pare
       3 (+以外) 4 = 12

21.3)  li ci to'e vu'u re du li mu
       3 (-の対極) 2 = 5
「+」が「-」の対極であるというのは、数学的な意味ではなく、言語学的な意味である。演算子の否定というものは、このように大雑把にしか定義できない。

「la'e」と「lu'e」を被演算子に付けて、被演算子の指示対象や記号を表すことができる。同様に、セルマホ NAhE に属するシマヴォの後に「bo」を付けると、被演算子を段階否定することができ、別の被演算子ならブリディが真となるという意味になる。

21.4)  li re su'i re du li na'ebo mu
       2 + 2 =  非5
数字 0-9 にはラフシがあり、それを使ってルジヴォを構成できる。数字のラフシはすべて CVC の形をしているので、名前としても使える。
21.5)  la zel. poi gunta la tebes. pu nanmu
       テーバイ攻めの七将は男だ。
もちろん、「zel.」という名が数のラフシと関係があるという保証は無い。誤解の恐れが無い別の表現は、以下のようなものだ。
21.6)  la zemei poi gunta la tebes. pu nanmu
       テーバイ攻めの七将は男だ。

PA 類に属するシマヴォには、他にもラフシを持つものがある。「so'a」、「so'e」、「so'i」、「so'o」、「so'u」、「da'a」、「ro」、「su'e」、「su'o」、「pi」、「ce'i」だ。その他、シマヴォ「fi'u」自体にはラフシが無いが、密接に関係するギスム「frinu(割り算)」にはラフシがあるので、数のラフシの中で分数記号を表すときにこれを使うことができる。

# 現状では、 frinu の短いラフシは無い。また、ラフシ fi'u は cfipu に充てられているので、 fi'u という形を分数を表すラフシとして使うことはできない。分数 fi'u のラフシとして使える形をギスム frinu から取り出すとすれば、可能な形は4文字ラフシ frin と5文字ラフシ frinu だけだ。

セルマホ MOI に属するシマヴォ「cu'o」はギスム「cunso(確率)」と密接に関係しており、これについても同様に、「cu'o」に基づくルジヴォを作るために「cunso」のラフシを使うことができる。 MOI 類に属するシマヴォ「mei」と「moi」には固有のラフシがあり、それぞれ「 mem/mei」「mom/moi」である。

これまで述べてきたメクソ文法では、演算子と被演算子を厳格に区別してきたが、ある種の数学(ラムダ計算、関数の代数)では、この区別がぼかされるので、ロジバンでもそれを可能にする方法が必要だ。演算子に「ni'enu'a」を接頭すれば、被演算子になる。つまり、「nu'a」が演算子をセルブリに変換し、そのセルブリを「ni'e」が被演算子に変換する。

被演算子を演算子に変換するには、シマヴォ「ma'o」を使う。このシマヴォについては、「fy.」のようなレルフ列を演算子にする手段として既に述べた。実際、「ma'o」の後にはどんなメクソ被演算子が来ても良い。その際必要であれば、省略可能な演算子「te'u」を使う。

「fy.」が変数として使われている文脈では、「ma'o fy. [te'u]」には潜在的に、意味論的曖昧さがある。つまり、「値が常に f であるような関数」という意味になってしまう。しかし普通は、数学者は関数と変数に同じレルフやレルフ列を使わない。したがって、こういう状況は、実際にはまず起こらない。

22. 4×20+7 (Four score and seven): メクソの問題点

エイブラハム・リンカーンのゲチスバーグの演説は、 「4×20+7 (Four score and seven) 年前」という言い回しで始まる。この節では、この数を表す方法をいくつか紹介しよう。一番つまらない方法は

22.1)  li bize
       87
だ。例22.1は数学的に正しいが、わざわざ複雑で形式的な言い回しを使った英語表現のニュアンスを犠牲にしている。
22.2)  li vo pi'i reno su'i ze
       4 × 20 + 7
例22.2も数学的には正しいが、依然として何か足りない。「score」という単語は 20 に対応してはいるものの、「ten」という単語が 10 に対応するのと同じ意味で対応しているのではない。「score」には 20 個のものという意味が含まれている。つまり、元の言い回しは「Four score years and seven years ago」の短縮形だ。「1 score」を 20 という数ではなく 20 個のものの群れとして考えると、以下のようになる。
22.3)  li mo'e voboi renomei te'u su'i ze
       4 (20の群れ) + 7
例22.3では、「voboi renomei」が「20個の群れ4個分」というスムティであり、「mo'e」と「te'u」はこのスムティを数に変換することによって、「su'i」の被演算子として使えるようにしている。

別の方法として、「score」を位取り表記法の底とみなすことができる。いくつかの言語には、20進数の名残りがあって、例えばフランス語で 87 は「quatre-vingt-sept」つまり「4-20-7」である(このせいでゲチスバーグの演説はかえってフランス語に訳しにくい)。この考えに基づいて「Four score and seven」を表すと、以下のようになる。

22.4)  li vo pi'e ze ju'u reno
       4720
全体として、おそらく例22.3が英語のニュアンスを最も良くとらえているだろう。例22.1例22.2は単純過ぎるし、例22.4は技巧的過ぎる。それでも、4つともロジバンとして正しい。教育的には、これらの例はロジバウ・メクソの表現力の豊かさを示している。言い表すことができるものならおそらく何でも、複数の方法で言い表すことが可能なのだ。

23. メクソのセルマホのまとめ

以下のまとめで特に記載が無い場合は、各 セルマホ に属するシマヴォは1つだけである。

     BOI     数字とレルフ列の省略可能な終端詞
     BY      変数と関数を表すレルフ(第17章を参照)
     FUhA    逆ポーランド記法 フラグ
     GOhA    「du(数学的等値)」と非メクソ・シマヴォを含む
     JOhI    行列 フラグ
     KUhE    前置型メクソの省略可能な終端詞
     LI      メクソ項(li と me'o)
     MAhO    被演算子を演算子にする
     MOI     メクソ・セルブリを作る(moi, mei, si'e, cu'o. 第11節を参照)
     MOhE    スムティを被演算子にする
     NAhU    セルブリを演算子にする
     NIhE    セルブリを被演算子にする
     NUhA    演算子をセルブリにする
     PA      数(第25節を参照)
     PEhO    前置型メクソ追加のマーカ
     TEhU    NAhU, NIhE, MOhE, MAhO, JOhI の省略可能な終端詞
     VEI     左括弧
     VEhO    右括弧
     VUhU    演算子(第24節を参照)
     XI      添字 フラグ

24. 全 VUhU シマヴォ表、被演算子構造付き

被演算子構造は、いろんな被演算子(a, b, c, ...で表している)が意味するものを指定する。この構造は、ここでの文脈が前置型であることを暗に意味している。なぜなら、被演算子の個数が自由に変えられるのは前置型演算子だけだからだ。しかし、 VUhU を中置型や逆ポーランド記法 (RP) で使う場合でも、同様の規則が適用される。

    su'i    足し算			(((a + b) + c) + ...)
    pi'i    掛け算			(((a × b) × c) × ...)
    vu'u    引き算			(((a − b) − c) − ...)
    fe'i    割り算			(((a / b) / c) / ...)
    ju'u    位取り記数法の底		数字列 a, 底を b として
    pa'i    比				a の b に対する比, a:b
    fa'i    逆数				1 / a
    gei     指数表記			b × (c [デフォルトで 10] の a 乗)
    ge'a    ヌル演算子			(被演算子なし)
    de'o    対数				log ab (デフォルトで 10 あるいは e)
    te'a    累乗				ab 乗
    fe'a    n乗根			a の b乗根 (デフォルトで平方根 b = 2)
    cu'a    絶対値			| a |
    ne'o    階乗				a!
    pi'a    行列の行結合子			(被演算子はすべて行ベクトル)
    sa'i    行列の列結合子			(被演算子はすべて列ベクトル)
    ri'o    積分				関数 a の積分、変数 b についての、区間 c にわたる
    sa'o    導関数			関数 a の導関数、変数 b についての、第 c 次の (デフォルトで c = 1)
    fu'u    不特定演算子			(可変)
    si'i    総和 (Σ)			a の総和、変数 b の区間 c にわたる
    va'a    加法逆元			-a
    re'a    転置行列			a*

25. 全 PA シマヴォ表:数字、区切り、その他の数

26. MOI シマヴォ表, 関連 rafsi と場所構造付き

	mei	x1 は基数 n に対等な集合 x2 が形成する群れ (mass) であり、その集合の元の1個以上が x3 である
		[集合 x4 との対応によって(# 個数 n が? x4 は基数の集合?)測定される/基準 x4 に基づいて]
	ラフシ:	mem, mei

	moi	x1 は集合 x2 の、規則 x3 に従って並んだ n 番めの元
		[基準 x4 に基づいて]
	ラフシ:	mom, moi

	si'e	x1 は群れ x2 の n 倍の分量 [基準 x3 に基づいて]
# 原文は「an (n)th portion」だが、第11節の注に書いた通り、 n 倍のはずである。
ラフシ: なし cu'o 事象 x1 が条件 x2 の下で発生する確率は n [基準 x3 に基づいて] ラフシ: cu'o (cunso からの借用; 第21節を参照 # 原文では第20節となっているが、おそらく21の間違い。) va'e x1 は段階 x2 上の段階位置 n にある [基準 x3 に基づいて] ラフシ: なし